羊の金貨「ラムダカット」【神聖ローマ帝国】

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ニュルンベルクの金貨【ラムダカット】

下の金貨は、神聖ローマ帝国(現在のドイツ)にあるニュルンベルクで作られた金貨です。

地球の上に羊がいて、旗を持っています。現在でも通用するような漫画的構図です。すなわち、人気があります。

ドイツ 1ダカット金貨【極美品】

【コインNo】8049
【額面】1ダカット
【製造年】1700年
【素材】金
【直径】22mm
【グレード】EF

売り切れ

羊を題材にしたニュルンベルクの金貨は、1600年代前半から1800年代初めまで、時折みることができます。しかし、1700年前後の発行量が圧倒的に多いです。

神聖ローマ帝国の貨幣と言えば、圧倒的に銀貨が多いです。金貨は多品種少量生産という感じで、破格の高値になる場合が少なくありません。数千万円だったり、価格が付けられないというレベルだったりします。

しかし、この金貨は、それらに比べると桁違いに安いです。親しみやすい構図と手に届く価格の2つの理由で、人気の金貨です。

ちなみに、この金貨の愛称はラムダカット(lamb ducat)です。ラムは羊、ダカットは金貨の種類を指します。

ラムダカットの種類

1700年を中心とする時代、様々な種類のラムダカットが大量生産されました。額面は、以下の通りです。

  • 5ダカット
  • 4ダカット
  • 3ダカット
  • 2ダカット
  • 1ダカット
  • 2分の1ダカット
  • 4分の1ダカット
  • 8分の1ダカット
  • 16分の1ダカット
  • 32分の1ダカット

さらに、それぞれの額面につき、円形の金貨と正方形の金貨がありました。とても種類が多いと分かります。

ラムダカットが大量生産された理由は?

ここで、疑問に思うかもしれません。「なぜ、ニュルンベルクで金貨が大量生産されたのか?」です。

ニュルンベルクの位置を確認しましょう。

ニュルンベルク地図

現在の地図で示していますが、今も当時も、ニュルンベルクは都市です。大きな国家というわけではありません。材料となる金を、どうやって手に入れたのでしょう?

また、当時のヨーロッパ世界は、重商主義でした。重商主義を簡単に確認しますと、「富は所有している金の量で決まる。だから、金の輸出は厳しく制限し、逆に、金の輸入は大いに奨励しよう」です。

すなわち、ダカット金貨を作れば作るほど、外部に流出してしまいます(ダカットは、貿易決済用の金貨の単位です)。

さらに、32分の1ダカットは、あまりに小さいです。貿易決済用として、こんなに小さな単位が本当に必要だったのでしょうか。

ニュルンベルクは、金の産地ではありません。このカラクリは、一体どうなっているのでしょうか。

この理由を考えるために、コインのデザインを先に確認しましょう。

ラムダカットのデザイン

羊がある面

地球に比べて、あまりに大きい羊がいます。そして、旗を持っています。当時の貨幣と言えば、「表は為政者の肖像、裏は国章など」がお決まりのパターンです。

あまりに異質なデザインと言えるでしょう。

この羊ですが、キリスト教に深く関連しています。イースターには羊がつきものです。この羊は、キリストを示しています。そして持っている旗には「PAX」と書かれています。ラテン語で「平和」です。

キリストが、地球全体に平和をもたらすイメージを表現しているのでしょう。

周囲に書いてある文字は、「TEMPORA NOSTRA PATER DONATA PACE CORONA」です。英語訳は複数あるようですが、「Father Crowns Our Times with the Gift of Peace」です。

「Father=父」は、キリストを示します。適切な日本語訳が難しいですが、キリストが平和な時代をもたらしてくれることを書いています。

ちなみに、この面には、年号が書いていないように見えます。しかし、年号がはっきりと書いてあります。どこにあるか分かるでしょうか。

回答は、下の通りです。

ラムダカットのデザイン(表面)

丸を付けた部分だけ、文字が大きくなっていることが分かりますでしょうか。このアルファベット4文字をつなげてみます。

MDCC

MDCCは、ローマ数字です。Mは1,000、Dは500、Cは100です。すなわち、MDCCは1700を意味します。発行年は1700年です。隠し文字で年号を示すという、遊び心がある金貨です。

裏のデザイン 

次に、裏を見ましょう。赤枠1は鳩の絵です。コインに描かれる鳥は、ワシなど強い鳥が多いですが、ここでは平和のハトです。

そして、赤枠2と3は、神聖ローマ帝国皇帝に伝わる紋章、赤枠4は、ニュルンベルクの紋章です。

ラムダカットのデザイン(裏面)

コインの周囲に書かれている文字は、「RESP. NORIMBERGENSIS SECVLVM NOVVM CELEBRAT」です。英訳すると「The Republic of Nuremberg celebrates the new century.」(ニュルンベルクが新世紀をお祝いします)という趣旨です。

表も裏も、平和とお祝いで満たされているコインです。年号を隠し文字にするという、心の余裕と遊びもあります。

ラムダカットが大量生産された理由

さて、話を戻しましょう。なぜ、ニュルンベルクでラムダカットが大量生産されたのか?です。

この金貨は、縁起物として人気がありました。結婚式の贈り物だったり、ニュルンベルクに旅行した際のお土産だったり、用途はたくさんあります。

ニュルンベルクで金を生産していたわけではありません。旅行者などがニュルンベルクに金を持ち込んで、ニュルンベルクの職人が、その金を使って金貨を作ったのです。そして、職人は手数料をもらいます。

この方法ですと、ニュルンベルクは自分で金を準備する必要はありません。作れば作るほど、手数料で稼げます。これが、ラムダカットが大量生産された理由です。

旅行者等の求めに応じて作ったので、生産数量は不明です。

また、1700年だけの限定生産品でなく、何年にもわたって継続的に作られました。よって、コインには1700とありますが、「1700年を中心とした時代に作られた」という理解が正確です。

ニュルンベルクは職人の町

では、ニュルンベルクには大量の金貨を作る技術があったのか?ですが、ニュルンベルクは職人の町でした。

時代が少し異なりますが、14世紀のニュルンベルクには、50業種の手工業に1,150名を超える親方がいました(「中世ニュルンベルクの国際商業の展開」)。

業種 親方数
靴屋 81
仕立屋 76
肉屋 71
毛皮加工業者 60
金細工師 16
その他多数

腕利きの金細工師が、ニュルンベルクに何人もいました。彼らがそれぞれ金貨を作りました。

また、旅行者等が持ち込む金を使って、金貨を作ります。全員が裕福というわけではありませんから、わずかな金を持ち込む人々も多かったことでしょう。よって、32分の1ダカットという少額金貨も作られました。

こうして作られた金貨が、現在に受け継がれています。

縁起物の金貨ですから、大切に保管されてきたことでしょう。羊の絵柄がかわいいという理由に加えて、歴史的背景も知ると、ラムダカットへの愛着がさらに大きくなります。

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