ヘンリー8世の大悪改鋳と銀貨【イギリス】

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ヘンリー8世が発行した銀貨

イギリスのヘンリー8世は、1509年から1547年までイギリスを治めました。ヘンリー8世と言えば、貨幣の価値を劇的に引き下げたため、「ヘンリー8世の大悪改鋳」という言葉で知られています。

下が、その銀貨です。デコボコしていますし、ヒビも入っています。刻印も甘くて質が良くありません。良く見ると、銀でない金属らしきものが見えます。

【コインNo】 7370
【額面】テストン銀貨
【製造年】1544年~1547年
【素材】銀
【直径】33mm
【グレード】VF
【価格】1,300,000円(税込)

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ヘンリー8世は、国王になってから、通貨の品質をいきなり引き下げたのではありません。コインの質から見ると、ヘンリー8世の治世は3つに分けられます。

そこで、3つを順に見ていきましょう。そして、第3期の銀貨(上の銀貨です)が高価な理由も確認しましょう。

【第1期】ヘンリー8世の貨幣製造

第1期は、1509年から1526年までの、およそ17年間です。この時期のヘンリー8世は、前国王のヘンリー7世に倣って通貨を作っていました。

下の通貨で、デザインを見比べてみましょう。グロートと呼ばれる銀貨です。銀貨ですので、時間の経過や保存状態によって色が変わってきます。

それを除いて観察しますと、この2つのコインを見分けるのは、プロでないと難しいでしょう。それくらい似ています。ヘンリー8世が発行した銀貨ですが、肖像はヘンリー7世のままです。

品質も、ヘンリー7世の質をそのまま維持しています。すなわち、この時期のコインは高品質だった、ということになります。

ヘンリー8世とヘンリー7世のグロート銀貨の比較

【第2期】ヘンリー8世の貨幣製造

第2期は、1526年から1544年までの、およそ18年間です。

この時期、ヘンリー8世は6回も結婚しています。これは、彼が女性好きだったからというわけではないようです。女の子ばかりが生まれてしまい、「男の子が生まれないのは何かの呪いだ」と考えて配偶者を変えていた面もあるようです。

カトリック教会と大ゲンカになったのは、想像に難くありません。

また、結婚と離婚を繰り返せば、お金がかかるだろうな、と予想できます。さらに、気ままで豪華な生活や戦争の繰り返しで、財政が厳しくなっていきました。

財政を復活させるには、どうすれば良いでしょうか。手っ取り早いのは、貨幣の品質を下げることです(戦争をやめるとか、豪華な生活を抑えるという選択肢はなかったのでしょうか…という感じです)。

例えば、銀の含有率が92%の銀貨を作っていたとしましょう。仮に、銀の含有率を(こっそりと)46%にすれば、同じ量の銀で貨幣を2倍作れます。いきなり資金が2倍になれば、財政が復活するというわけです。

また、金銀の交換比率が、イギリスとヨーロッパ大陸で異なっていたため、金が大陸に流出していました。これも、通貨改革を後押ししました。

この結果、第2期の改革は、最初に金貨の金含有量を上昇させ、銀貨の銀含有量を継続的に下落させることから始まりました。

ヘンリー8世の改鋳と言えば、すべての通貨の品位を一方的かつ大幅に下落させたイメージがあります。しかし、必ずしもそうでなかったことが分かります。

下の銀貨は、第2期のものです。

ヘンリー8世 グロート銀貨

【コインNo】 7047
【額面】グロート銀貨
【製造年】1526年~1544年
【素材】銀
【直径】25mm
【グレード】VF
【価格】70,000円(税込)

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【第3期】ヘンリー8世の貨幣製造

では、なぜ「ヘンリー8世の大悪改鋳」と後世に伝えられるのでしょうか。それは、第3期が原因です。

第3期は1544年から1547年です。3年ほどしかありません。ヘンリー8世の治世は1509年から1547年までですから、全体で40年弱もあります。この最後の3年間が、ヘンリー8世の評価を決定的にしました。

1544年、ヘンリー8世は、スコットランドに攻め込みました。フランスにも攻めました。フランスとの戦争は損害が少なかったようですが、戦費を調達できずに和約しました。

こうなると、お金への欲求が強くなります。「お金さえあれば、もっと勝てたのに!」です。

そこで、少ない量の銀でたくさんの銀貨を発行しました。

こうして、銀貨に占める銀含有量は50%になり、さらに下がって3分の1になりました。ここまで下がると、銀貨と呼んで良いのかどうか、少々心もとないです。

見た目は銀貨ですが、使い込まれて削れてくると、硬貨の奥に隠れていた銅が見えてしまいます。そして、硬貨はどこが削れやすいかと言えば、最も盛り上がった部分です。銀貨は、ヘンリー8世が正面を向いた肖像を使っていました。

すなわち、鼻の頭が真っ先に削れて、茶色の銅が見えてしまいます。

このため、”Old Coppernose”(古びた銅の鼻)という、うれしくないあだ名まで付けられる始末でした。

世の中から古い銀貨が消える

さて、私たちがこんな状況に遭遇したら、どうしましょうか。おそらく、以下の通りでしょう。

  • 昔から伝わる高品質の銀貨は、確実に手元に保管する
  • 支払は、何が何でも”Old Coppernose”で支払う

実際のイギリスでもこれが発生し、流通している貨幣の90%が低品質の銀貨になった模様です。まさに、「悪貨は良貨を駆逐する」です。

しかし、筆者の率直な感想を書くなら、「高品質の銀貨が10%も流通していたの?」という感じです。何が何でも低品質の銀貨で支払いたいはずですが、たまたま手元になくて、高品質の銀貨で泣く泣く支払った、という感じなのかもしれません。

貿易決済でも、受け取りを拒否される

また、これだけ品質が低くなると、外国から受け取りを拒否されます。銀貨という名前がついた銅貨で支払ってもらっては困るというのは、とても良く理解できます。

すなわち、貿易に支障が生じることになります。

国家財政が厳しい状況は、改鋳で見て取れます。貿易でも支障が生じるとなれば、民衆の生活にも悪影響があったと想像できます。

第3期の銀貨が高価な理由

さて、ヘンリー8世は、1547年に亡くなりました。ヘンリー8世より前のイギリスの硬貨は、高い品質でした。しかし、ヘンリー8世の治世で逆転しました。

下のコインは、第3期のものです。いびつな形をしていますし、刻印も丁寧な仕事でなくて雑です。周囲にヒビが入っていますし、画像を大きくすると、「これは銅の色でしょう?」という、茶色っぽいものが見えます。

ヘンリー8世 テストン銀貨 タワーミント

【コインNo】 7370
【額面】テストン銀貨
【製造年】1544年~1547年
【素材】銀
【直径】33mm
【グレード】VF
【価格】1,300,000円(税込)

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しかし、価格はとても高いです。

これはなぜかといえば、現存数が少ないからです。イギリスとしては、あまりに低品質な硬貨を流通させ続けていると、経済活動への支障が大きくなりすぎます。

また、これは予想ですが、「イギリスの硬貨?全然ダメでしょ。イギリスなんか。」という感じで、欧州全体から見下されたことが容易に想像できます。

そのような状況は、急いで改善しなければなりません。よって、ヘンリー8世が発行したコインは回収されました。すなわち、現存数が少ないです。

このコインは、品質だけで判断すると買えないのでは?と思います。その歴史的背景と希少性に価値があります。

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