ペルーのコブ・マネー(cob money)【金貨~ヘラクレスの柱】

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ペルーで金貨を大量生産「コブ・マネー」

ヘラクレスの柱がデザインの金貨

スペインによる新大陸の発見は、スペインに大きな富をもたらしました。すなわち、金銀が大量にもたらされました。

南米で金銀を生産し、それをスペインに持ち帰って金貨や銀貨を作っても良いのですが、現地で金貨を作って欧州各地に持ち込む方が、便利です。

そこで、金の保有量が多いので、デザインよりも大量生産を重視したコインがペルーで作られました。コブ・マネー(cob money)です。コブ・タイプ(cob type)とも呼ばれます。

これは、金を棒状にして輪切りにし、刻印を打ち付けたものです。

コブ・マネーのイメージ

形よりも、金貨一つ一つの重量が一定になることを重視しています。よって、完成した金貨の形は、丸いというよりはゴツゴツとした感じになります。

ペルー 8エスクード金貨 フェリペ5世【コブタイプ】

【コインNo】8399
【発行国】ペルー
【額面】8エスクード
【製造年】1734年
【素材】金
【直径】32mm
【グレード】VF
【カタログ】Fr7/KM38.2

売り切れ

コインのデザイン

では、コインのデザインを見ていきましょう。

下のコイン画像で分かります通り、コインの周囲の文字が一部しか見えません。すなわち、刻印に比べてコインが小さかったということになります。

その分だけ、厚みがあります(よって、金の重量は一定に保たれています)。

コブ・マネーのデザイン(表)

では、この金貨は周囲の文字が一部しか見えないから価値が低いのか?ですが、高い価値を有しています。

と言いますのは、コイン中心部のデザインや文字が、はっきりと見えるからです。ここまではっきりと判読できるのは、多くありません。

というわけで、デザインの質を脇において、大量生産を大きく重視していた様子が分かります。コイン中心部のデザインは、下の絵の通りです。

コブ・マネーの文字

線によって、9つの枠が作られています。そして、それぞれに数字または文字が描かれています。意味を順に確認しましょう。

最上段【L・8・N】

左の「L」

ペルーの首都であるリマ(Lima)を示します。すなわち、この金貨はリマで製造されたという意味です。

真ん中の「8」

通貨単位です。8エスクードを示します。

右の「N」

金貨の検査官(assayer)の名前です。Joaquin Negron氏の頭文字「N」が刻印されています。

なお、この検査官ですが、コインの品質を確かめた責任者です。この役職は、売買可能でした。すなわち、お金で買って検査官の役職に就いたり、他人に転売したりできました。

お金を支払ってでも就きたい役職だった理由は、何でしょうか。それは、儲かるからでしょう。

例えば、金の重量を規定値の98%にしたうえで、100%完璧な金貨です!と認定して発行したとしましょう。差の2%は、自分の懐に入れます。

お金を払って役職を得たのですから、こんな感じでしっかり稼がないと、元が取れません。

というわけで、通貨の信頼度が低下してしまいました。よって、18世紀に制度が改められています。

中段【P・V・A】

中段には、3つのアルファベットが書かれています。PVAです。これは、ラテン語「Plvs Vltra」の略語です。

英語で「Further Beyond」すなわち「もっと向こうへ」「さらなる前進」といった趣旨になります。

Plvs Vltra は、スペインのモットー(標語・座右の銘)として採用されています。下は、スペインの現在の国章です。リボンの部分に、PlvsとVltraが書かれているのが分かります。

スペインの国章

(引用:Wikipedia

下段【7・3・4】

下段は、数字の734です。これは、1734年を示します。この金貨が製造された年号です。

ヘラクレスの柱 

コインのデザインを、もう一度見てみましょう。

コブ・マネー『ヘラクレスの柱』

2つの王冠の下に、2本の太い線があることが分かります。これは、ヘラクレスの柱と呼ばれています。柱の下にある波線は、海を示します。

スペインの現在の紋章を見ますと、左右に、リボンが巻かれた2つの柱があります。これも、ヘラクレスの柱です(海も描かれています)。

このヘラクレスの柱ですが、旧世界と新世界の境界線を示しています。現在の地図でいえば、ジブラルタル海峡が該当します。

スペイン・ジブラルタルの地図

(引用:google map

英領ジブラルタルに、ヘラクレスの岩と呼ばれる山があります。下は、ジブラルタルの写真です。

ヘラクレスの柱は2本ですが、もう一方は海を挟んでモロッコ側にあります。

ジブラルタルの岩

(引用:google map

ヘラクレスの柱は、世界の果てを示していました。すなわち、これより西は何もないぞ、ということです。

スペインは、世界の果てと考えられていた地域を探検して、巨大な富を得ました。現在の紋章にもヘラクレスの柱が描かれているのは、スペインの誇りを示しているように感じます。

コインの周囲の文字

コイン中心部のデザインを離れまして、周囲の文字を確認しましょう。

今回ご案内しているコインでは文字が切れていますが、本来は「ET YNDIARVM REX ANO 1736」と書かれています。「西インド(=米大陸)の王 1736年」という趣旨です。

コブコインは、コインの形について重視していません。このため、今回のコインのように文字が切れてしまっているのが通常です。

紋章が描かれた面

次に、反対側の面に移りましょう。

コブ・マネーのデザイン(裏)

真ん中に、十字があります。これは、エルサレムの十字架と呼ばれています。カトリック系国家のコインに見られるデザインです。

そして、十字架で区切られた4つの部分に、フェリペ5世時代の紋章が描かれています。

左上と右下は、お城です。カスティーリャ王国を示します。右上と左下は、ライオンです。レオン王国を示します。

カスティーリャ王国もレオン王国も、かつてイベリア半島に存在した国です(後のスペイン王国)。

周囲に書いてある文字は、PHILLIPPVS V, D.G. HISPANIA です。「神の恵みによりスペイン王となったフェリペ5世」という趣旨になります。

ペルーでも、様々なコインが発行されました。その他のコインにつきましては、別記事「ペルーのアンティークコイン【金貨・銀貨】の読み方」でご確認ください。

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