神聖ローマ帝国(ドイツ)のアンティークコイン-希少性が高い理由

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アンティークコインを眺めていると、神聖ローマ帝国(およびドイツ)のアンティークコインの種類がとても多いことに気づきます。しかも、とても高額なコインが少なくありません。

そこで、神聖ローマ帝国(およびドイツ)のコインの種類が多い理由を考察しながら、アンティークコインをご紹介しましょう。

神聖ローマ帝国は、領邦国家の集合体

神聖ローマ帝国は国家ですが、一般的なイメージとは大きく異なります。半ば独立した小さな国家の集合体でした。

神聖ローマ帝国内に存在した小さな国家を、領邦国家(りょうほうこっか)と言います。領邦国家の数は、最も多い時期で300を超えましたので、大変な数です。

そして、それぞれの領邦国家は、(一定のルールがありながらも)自由に貨幣を作りました。このため、神聖ローマ帝国ではコインの種類がとても多いです。

政治的意味を持った金貨

神聖ローマ帝国には、皇帝がいました。その皇帝も、領邦国家の一つを治めていたにすぎません。また、他の領邦国家を圧倒するスーパー国家というわけでもありませんでした。

このため、仲間の領邦国家を常に増やさなければなりません。

さらに、既に友好関係にある領邦国家に対しては、その親密度を維持しなければなりません。でないと、神聖ローマ帝国皇帝としての地位を維持できなかったためです。

そこで、ある領邦国家で新たに誰かが即位したという場合、あるいは、神聖ローマ帝国内で重要な会議が開催された場合などに、神聖ローマ皇帝は特別に豪華な金貨を作り、諸侯(=領邦国家を治めている人)に贈ることがありました。

すなわち、金貨は単なる通貨でなく、政治的な意味を持っていたということです。「自分こそが、皇帝である」と、威厳を示すツールとして、特別な金貨が作られました。

そして、そのような金貨は流通目的ではありませんから、製造数はわずかです。すなわち、希少性が極めて高いです。

このため、とんでもない高価なアンティークコインは、神聖ローマ帝国で作られたものが少なくありません。

神聖ローマ帝国の領土の変遷

神聖ローマ帝国のアンティークコインの種類が多い理由の一つに、帝国が存続した期間があります。962年から1806年までです。とても長いです。

この間、領土は大きく変化しました。下の地図(引用:World Map)の通りです。

神聖ローマ帝国の範囲(962年~1806年)

1806年、神聖ローマ帝国はナポレオンに滅ぼされました。その直前でも、上の地図のような広大な地域を持っていました。

ドイツ統一後も、各地でコインが作られた

バラバラだった国家がドイツとして統一されたのは、1871年のことです。しかし、統一国家においても、諸侯だった各地の有力者は、金貨を発行し続けました。

このため、統一後も、数多くの種類のコインが発行されています。

神聖ローマ帝国とドイツのアンティークコイン

それでは、神聖ローマ帝国とドイツのアンティークコインを紹介していきましょう。そのコインが作られた領邦国家の位置につきましては、現在のドイツの州を使ってご案内します。

現在の州は、以下の通りです。

ドイツ連邦共和国(2019年現在)

ブラウンシュヴァイク・ヴォルフェンビュッテル(Braunschweig-Wolfenbuttel)

【コインNo】 7995
【額面】5ターレル
【製造年】1609年
【材質】銀
【直径】82mm
【グレード】Tone EF+
【価格】5,400,000円(税込)

ブラウンシュバイク・ヴォルヘンビュッテル5ターレル銀貨 このコインを購入する

ブラウンシュバイクという場所と、ヴォルヘンビュッテルという場所を同時に収めたハインリヒ・ユリウス(Heinrich Julius、在位:1589-1613)が発行した銀貨です。現在のニーダーザクセン州にありました。

この銀貨の特徴は何と言っても、その大きさです。直径が82mmもあります。大型銀貨と言えば、直径は37mm~40mmくらいです。

直径が2倍以上ということは、面積は4倍以上あります。その圧倒的な大きさと重さは、コイン収集家を驚かせることでしょう。

ザクセン(Sachsen)

【コインNo】 7842
【額面】3ダカット
【製造年】1630年
【材質】金
【直径】38mm
【グレード】EF
【価格】1,500,000円(税込)

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このコインが作られた当時のザクセン(Sachsen)は、現在のザクセン州あたりにありました。また、皇帝はヨハン・ゲオルグ1世(ザクセン選帝侯)でした。

1530年、カトリックとプロテスタントの和解を求める会議が開催されたのですが、その会議開催100周年を記念して金貨が発行されました。それが、この金貨です。

なお、当時のザクセンは、周辺諸国と宗教が絡んだ政争を続けていました。(想像にすぎませんが)その種の政争を終わらせたいという願いが込められていたかもしれません。

【コインNo】 7034
【額面】2ターレル
【製造年】1657年
【材質】銀
【直径】65mm
【グレード】Tone EF
【価格】450,000円(税込)

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同じく、ザクセンのアンティークコインです。発行者は、上のコインを出したヨハン・ゲオルグ1世の次男、ヨハン・ゲオルグ2世(Johann Georg II)です。

このコインの特徴は、その大きさです。直径が65mmもあります。通常の2倍くらいの直径です。

この銀貨は、神聖ローマ帝国皇帝フェルディナンド3世の死を記念し、新皇帝が選定されるまでの間、ヨハン・ゲオルグ2世がザクセン選帝侯の地位を受け継ぐことを示しています。

なお、選帝侯とは、神聖ローマ帝国皇帝を誰にするか投票する権利を持つ人という意味です。

ブランデンブルク・プロイセン(Brandenburg-Preussen)

【コインNo】 7732
【額面】1ピアストル
【製造年】1751年~1752年
【材質】銀
【直径】39mm
【グレード】Tone EF+
【価格】1,350,000円(税込)

ブランデンブルク・プロイセンの1ピアストル銀貨(貿易銀) このコインを購入する

ブランデンブルク・プロイセン(Brandenburg-Preussen)は、現在のブランデンブルク州からポーランド北部にまたがる地域です。

この銀貨は、貿易決済用として作られました。貿易相手は中国(清)です。当時プロイセンを治めていたフリードリヒ2世(在位:1740-1786)が直接貿易をすることはなく、エムデン社(Emden Company)を作って貿易しました。

イメージとしては、イギリスの東インド会社のような感じです。

貿易の規模が小さく、コインの残存数が少ないことが、このコインの価値を高めています。

シュヴァルツブルク・ゾンダースハウゼン(Schwarzburg-Sonderhausen)

【コインNo】 7803
【額面】20マルク
【製造年】1896年
【材質】金
【直径】22mm
【グレード】AU/UNC
【価格】1,350,000円(税込)

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シュヴァルツブルク・ゾンダースハウゼン(Schwarzburg-Sonderhausen)は、現在のチューリンゲン州にありました。

1896年ですので、ドイツは既に統一されています。しかし、こうして各諸侯は独自のコインを発行し続けました。

このコインはAU/UNC(準未使用~未使用)ですので、とても鮮やかなデザインが残されています。ドイツ全体でなく領邦国家単位での発行ですので、製造数も自然と少なくなります。

よって、希少性が高くなっています。

ヴァルデック・ピルモント(Waldeck-Pyrmont)

【コインNo】 7810
【額面】2ターレル
【製造年】1847年
【材質】銀
【直径】41mm
【グレード】AU/UNC
【NGC】4713031-007
【価格】1,250,000円(税込)

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ヴァルデック・ピルモントは、ヘッセン州にありました。

写真の銀貨の最大の特徴は、アンティークコイン鑑定会社であるNGCにより、最高品質の鑑定を受けていることです(2019年2月現在)。

アンティークコインを集めるなら、各コインについて世界最高の品質を持ったものが欲しいというコレクターは少なくないでしょう。そのような皆様にピッタリの逸品です。

ザクセン・コーブルグ・ゴータ(Sachsen-Coburg-Gotha)

【コインNo】 7800
【額面】20マルク
【製造年】1886年
【材質】金
【直径】22mm
【グレード】UNC
【価格】850,000円(税込)

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ザクセン・コーブルグ・ゴータ(Sachsen-Coburg-Gotha)は、ザクセン・コーブルグとザクセン・ゴータの2つの両方を治めた公国の家系です。この金貨は、ドイツ統一後に発行されました。

なお、ザクセン・コーブルグ・ゴータの血筋には、イギリス女王ヴィクトリアの夫であるアルバート公がいます。

現在の王室は、ヴィクトリア女王・アルバート公の直系です。すなわち、ザクセン・コーブルグ・ゴータ家は、現在のイギリス王室の親戚ということになります。

レーゲンスブルグ自由都市(Free city of Regensburg)

【コインNo】 7870
【額面】1ダカット
【製造年】1792年~1806年
【材質】金
【直径】24mm
【グレード】EF
【価格】620,000円(税込)

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レーゲンスブルグ自由都市(Free city of Regensburg)は、現在のバイエルン州に位置しています。

自由都市とは、周辺諸侯の支配を受けることなく、皇帝直轄とされた都市です。また、皇帝に完全に服従するわけではなく、自治が認められていました。このため、「自由都市」です。

コインには支配者の肖像が描かれることが多いですが、このコインは都市の景観です。この点からも、自由都市の自治権の大きさを想像することができます。

なお、この金貨にはマウント痕(ペンダント痕)があります。指摘されないと分からないくらいのレベルですが。

マウント痕につきましては、別記事「アンティークコインのマウント痕とは」でご確認ください。

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