植民地時代のブラジルで金貨を生産

ブラジルは、1500年頃から1822年に至るまで、ポルトガルの植民地でした。この期間、ブラジルで数多くの金貨が生産されました。
ポルトガルと同様に多くの植民地を得たイギリスは、イギリス本国だけでの生産が基本でした。対応が対照的です。
そこで、(株)ダルマ公式サイトに掲載されている金貨を、ポルトガルの君主別に並べました。コインの変遷を見ていきましょう。
ブラジルの造幣局
ブラジルの金貨を調べていくと、造幣局の情報が数多く出てきます。そこで、先に造幣局の位置を確認しましょう。
発行国 | 場所 |
---|---|
B | バイーア |
R | リオデジャネイロ |
M | ミナスジェライス |
リオデジャネイロの名前は、日本でも時折見聞きします。では、バイーア(Bahia)とミナスジェライス(Minas Gerais)はどこでしょうか。
地図を見ますと、バイーア州とミナスジェライス州が見つかります。しかし、州は大変広い土地です。もっと具体的にはどこなのか、確認しましょう。
下は、ブラジルの地図です。赤枠で囲ったあたりを拡大します。


(引用:GoogleMap)
サルバドルは、バイーア州の州都です。そして、その南(赤丸部分)は、ミナスジェライス州のかつての州都、オウロ・プレート(当時の名称は Vila Rica)です。上の2つに加えて、リオデジャネイロにも造幣局がありました。
バイーア造幣局が、ブラジル最初の造幣局です。1694年に設立されました。この3つの造幣局は同時に作られて併存したわけではなく、何度か移転を繰り返しています。
造幣局ができる以前は、ブラジルで金貨を製造していませんでした。ポルトガルの貨幣に刻印(カウンターマーク)を追加したものが、主に流通していました。
- 関連・参考ページ
- 18世紀末のイギリスの混乱とコイン【カウンターマーク、トークン】
では、ポルトガルの君主別に金貨を見ていきましょう。
ジョアン5世(在位:1706年~1750年)
ジョアン5世(Joao V)は、マフラ修道院の建設で有名です。下は、その写真です。このような立派な建物を建築できた背景には、ブラジルからもたらされた豊富な金(きん)がありました。

(引用:Wikipedia)
下の4,000レイス金貨は、いずれもバイーア造幣局で作られました。コイン左側の画像を見ますと、十字架が描かれており、「B」の文字が4つあります。
このBがミントマーク(造幣局の印)です。
なお、管理No.8408の金貨は、未使用です。1719年製造ですから、300年以上前の金貨です。300年という時を、未使用で受け継がれてきました。貴重な金貨です。
ブラジル 4000レイス金貨 ジョアン5世【未使用品】
- 造幣所:バイーア
ブラジル 4000レイス金貨 ジョアン5世
- 造幣所:バイーア
下の金貨は、いずれもミナスジェライス造幣局で作られました。
ブラジル 20000レイス金貨 ジョアン5世【準未使用品】
- 造幣所:ミナスジェラス
ブラジル 12800レイス金貨 ポルトガル王ジョアン5世【極美品】
- 造幣所:ミナスジェラス
ジョゼ1世(在位:1750年~1777年)
ジョアン5世が亡くなると、息子のジョゼ1世が王位に就きました。ジョゼ1世は、国政にあまり興味がなかった模様です。
と言いますのは、外務大臣兼国防大臣であったポンバル侯爵に、国政のほとんどを委ねたためです。
ボンバル侯爵は、以下の改革を実行しました。
- 1755年のリスボン大震災(死者数6万前後)の復興事業
- 産業改革と育成
- 教育制度改革
- 農業保護政策
- 奴隷制廃止
- イエズス会排斥 など
ブラジル 6400レイス(ペカ)金貨 ジョゼ1世【完全未使用】
- 造幣所:バイーア
マリア1世とペドロ3世(1777年~1786年)
ジョゼ1世の跡を継いだのは、娘であるマリア1世です。配偶者のペドロ3世と共同統治をしました。よって、金貨にも2人の肖像が描かれています。
なお、ジョゼ1世の元で独裁的な権力を握っていたポンバル侯爵ですが、マリア1世は彼を好まなかったため、解任しました。
ブラジル 6400レイス金貨 マリア1世&ペドロ3世【極美品】
- 造幣所:リオデジャネイロ
マリア1世(在位:1786年~1816年)
ペドロ3世が亡くなったのちは、マリア1世の単独統治となりました。これを受けて、コインのデザインも変更されています。
なお、マリア1世は1816年まで女王の地位にありましたが、途中で精神疾患がひどくなりました。そこで、1799年から1816年にかけて、息子のジョアン6世が摂政として実質的な国政にあたりました。
精神疾患がひどくなった原因の一つは、フランス革命です。1800年前後は、ナポレオン戦争がヨーロッパ中を覆った時代です。
1807年には、ナポレオン軍がポルトガルに侵攻しました。これを受け、ポルトガルの政府機能をブラジルに移しています(マリア1世はブラジルで死去し、ジョアン6世は1821年に帰還しました)。
ブラジル 6400レイス金貨 マリア1世【極美品】
- 造幣所:リオデジャネイロ
ブラジル 6400レイス金貨 マリア1世【極美品+】
- 造幣所:リオデジャネイロ
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