品質の判断基準

アンティークコイン収集にあたり、品質の良さは重要な基準です。しかし、専門家でもない限り、品質を正確に判断するのは困難です。
そこで、一般の人でも分かりやすいように、グレードと呼ばれる仕組みがあります。グレードを一言で説明するならば、格付です。
格付が高いコインは、製造時の状態に近いことを意味します。逆に、格付が低くなるほど、コインに描かれた文様等を判別しづらくなります。
グレードのつけ方は、数種類ある
なお、このグレードですが、世界の統一基準があるわけではありません。日本で良く知られた格付方法は、3つあります。順に確認しましょう。
- イギリスのグレード
- 日本のグレード
- アメリカのグレード
イギリスおよび日本のグレード
アンティークコインの取引や歴史が長いのは、イギリスです。そこで、イギリスの基準から確認しましょう。イギリスのグレードに対応させて、日本のグレード表記を右側に表示します。
イギリス | 日本 |
---|---|
PF(Proof) | プルーフ |
PL(Proof-like) | プルーフライク |
FDC(Fleur de Coin) | 完全未使用品 |
UNC(Uncirculated) | 未使用品 |
AU(Almost Uncirculated) | 準未使用品 |
EF(Extremely Fine) | 極美品 |
VF(Very Fine) | 美品 |
F(Fine) | 並品 |
VG(Very Good) | 劣品 |
なお、それぞれのグレードに「+」や「-」をつける場合があります。例えば、「-EF」です。これは、グレードはEFだけれど、他の一般的なEFに比べると少し摩耗が進んでいるな、という場合に使われます。
逆に、「+EF」ならば、グレードはEFだけれど、他の一般的なEFに比べると品質が良いという場合に使われます。
よって、グレードはたくさんあるということになります。
ちなみに、グレードについて、覚えようと頑張る必要はありません。必要になったら、このページをご覧いただければ十分です。自然と覚えてしまうでしょう。
以下、それぞれのグレードの説明と、参照例となるコインをいくつかご案内します。
金貨の元となる金の板をピカピカに磨き、プルーフ専用の金型を使って刻印します。製造後も、傷がつかないように丁寧に扱われます。
すなわち、プルーフは流通目的でなく、贈答用など特別な目的で作られます。PFのアンティークコインの例は、以下の通りです。
イタリア ヴィットリオ・エマヌエル3世 100リレ【マットプルーフ・準未使用~未使用品】
【コインNo】8359
【製造元】イタリア
【額面】100リレ
【製造年】1925年
【材質】金
【直径】35mm
【グレード】Matt PF AU/UNC
【カタログ】Fr32/KM66
【NGC】4624395-004/62/

モナコ 200フラン金貨【未使用品】
Proof-likeを訳すと、「プルーフのような」です。すなわち、プルーフとして作られたわけではありません。
しかし、プルーフ製造後、量産品として作られたコインの最初期のものは、プルーフのような仕上がりになることがあります。これがPLです。
PLのアンティークコインの例は、以下の通りです。
ベルギー アルベール1世 20フラン試作銀貨
ポーランド クラクフ共和国 1ズロッチ銀貨
未使用品の中でも、完全未使用です。よって、とてもきれいな状態です。ただし、「傷一つない」という意味ではありません。
現代の新規発行の金貨や銀貨は、傷一つなくピカピカです。しかし、近代以前のコインは、製造方法が現代と異なります。
また、長期間の保存を経て現代に受け継がれていますので、多少の傷が出てしまうのは仕方ありません。
近代以前のコイン製造方法につきましては、別記事「アンティークコインの製造方法」でご確認ください。
FDCのアンティークコインの例は、以下の通りです。
ギリシャ 20ドラクマ金貨 1967年4月21日革命記念
ベルギー 5フラン銀貨 レオポルド1世
製造時の状態を保った、未流通のコインです。
ただし、製造時や運搬時に傷がつきますので、現代コインのUNCと同じように考えることはできません。また、長期間の保管を経ていますので、銀貨などは自然に変色している場合があります。
近代以前のコイン製造方法につきましては、別記事「アンティークコインの製造方法」でご確認ください。
UNCのアンティークコインの例は、以下の通りです。
フランス ナポレオン3世 5フラン銀貨
イタリア エリザ・ボナパルト&フェリーチェ・バチョッキ 5フランキ銀貨
準未使用品は、実際に流通したコインです。しかし、流通過程でついた傷が少なく、未使用状態に近い状態のものを指します。
AUのアンティークコインの例は、以下の通りです。
イタリア シチリア フェルディナンド3世30タリ銀貨
ドイツ フランクフルト 2ターレル銀貨
ドイツ 東アフリカ 2ルピー銀貨
極美品は流通したコインですが、摩耗や傷が比較的少なく、デザインが明晰に判別できるものを指します。
「明晰に」というのは、人によって感じ方が異なる表現です。そこで、下のコインをご覧ください。デザインがこれくらいはっきりしていると、EFになります。
EFのアンティークコインの例は、以下の通りです。
アメリカ 女神胸像 10ドル金貨
スペイン カルロス3世 8エスクード金貨
美品は「美」という漢字が使われています。また、英語の”Very Fine”は、「大変すばらしい」という意味です。しかし、アンティークコインの世界では、少々異なる意味で使われています。
すなわち、VF(美品)とは「流通の過程で摩耗が進み、傷もあり、デザインの細部は不明確だが、本来のデザインを十分に判別できる」です。
下のコインをご覧ください。デザインがこれくらいはっきりしていると、VFになります。
ダンツィヒ(ポーランド) 1ダカット金貨 ヨハン・カシミール
ベルギー キャバリアードール金貨 フィリップ3世
サウジアラビア 4ポンド金貨【フィラデルフィアミント】
FとVGは、2つまとめて同じ説明が可能です。すなわち、「流通の過程で全体的に摩耗が進み、傷も多くあり、デザインの判別も難しい」状態です。
Fの英語はFine(=素晴らしい)、VGはVery Good(=大変良い)です。しかし、アンティークコインにおける意味は大きく異なります。
これは憶測ですが、何百年またはそれ以上前のコインが、現在にまで受け継がれています。そのこと自体が素晴らしいという意味を込めた表現なのかもしれません。
日本語の「並品」「劣品」は、比較的正直に表現していると言えそうです。
ローマ帝国 セステルティウス銅貨 皇帝ティベリウス
古代ギリシャ リディア王国 ステーター銀貨
アメリカのグレード
アメリカには、PCGSとNGCと呼ばれる鑑定会社があります。これらは、より細かい格付けをしています。
イギリスの7つのグレードに、1から70までの数字をつけています。すなわち、より細かい評価になっています。
イギリス | PCGS、NGC |
---|---|
FDC(Fleur de Coin) | PF/MS 65~70 |
UNC(Uncirculated) | MS 62~64 |
AU(Almost Uncirculated) | AU 58~MS 61 |
EF(Extremely Fine) | XF 50~AU 55 |
VF(Very Fine) | VF 35~XF 45 |
F(Fine) | F 15~VF 30 |
VG(Very Good) | G 4~F 12 |
グレード/価値【カテゴリ】
歴史(history)
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