「汚れを落とした綺麗なコイン」と
「素材のままのコイン」
アンティークコインとは、いわば古いコインです。古いということは、金貨・銀貨問わず、色が多少黒っぽくなります。
これは、長年の保存で付いた汚れや錆などが原因です。そこで、磨いてあげるときれいになります。下のコインは、磨いた後のコインです。アンティークコインの世界では、磨くことをポリッシュ(polished)と言います。
ポルトガル 1クルザード金貨【磨き(polished)】
比較のために、ほぼ同じ時期のポルトガルの金貨と比較してみましょう。こちらは、上の金貨ほどには輝いていません。
ポルトガル 500レイス金貨
上の2枚を比較しますと、磨いたコインの方が明らかにピカピカしています。アンティークコインから離れて考えますと、一般的には、ピカピカで美しい方が望ましいです。
人為的な修正は価値が大きく下がる
しかし、輝いている方が良いからといってアンティークコインを磨くと、後悔することになります。なぜなら、価値が劇的に下がってしまうからです。
なぜ価値が下がるか?ですが、それはコインに手を加えることにより、本来の姿が失われてしまうからです。
- 製造時の状態を保ったコイン(経年による汚れあり)
- 磨いてきれいになったコイン
どちらが欲しいですか?という話になります。
コインの格付を表現する方法に、グレードがあります。このグレードの基準は、「コイン製造時の姿をどれほど維持しているか?(ただし、自然による変化はマイナスとしない)」です。
磨いて輝きを取り戻したコインは、後世に手を加えて実現した輝きです。アンティークコインの世界では、製造後の人為的な修正等はマイナス要素です。
よって、金貨でも銀貨でも、磨くとアンティークコインの価値は大きく下がってしまいます。
これは、別記事「アンティークコインの修正痕は価値が大きく下がる」と同じような趣旨です。傷があるからといって、その傷を修正してはいけません。価値が大きく下がってしまいます。
ピカピカのアンティークコインが欲しい場合
しかし、金貨はピカピカに輝いている方が良い、という場合もあるでしょう。そこで、輝いている金貨や銀貨が欲しい場合の対策を、2つご案内します。
1モダンコインを買う
モダンコインとは、発行後の期間が概ね100年未満のコインです。新しいコインになればなるほど、新品です。輝きも素晴らしいでしょう。
下の金貨は、スイスの射撃祭を記念して発行されたモダンコインです。プルーフ(鏡面仕上げ)でピカピカです。しかも、完全未使用です。
あまりにピカピカなので、写真撮影の際にフラッシュの光を完璧に反射してしまい、コインが黒く写っています。この黒さが、プルーフの輝きを示しています。
スイス 現代射撃祭記念500フラン金貨【発行枚数:275枚】
しかも、発行枚数は275枚しかありません。この輝きと発行枚数の少なさは、とても魅力です。
高価なアンティークコインに比べると、手に届きやすい価格というのも、モダンコインを収集するメリットの一つです。
2既に磨いてあるコインを買う
もう一つの対策は、「磨いてあるコインをあえて買う」という方法です。コインを磨いてはいけない理由は、価値が下がる(=価格が下落する)からです。しかし、輝いているアンティークコインが欲しいです。
ならば、既に磨いてあるアンティークコインを買えば良いのでは?ということです。
磨いたコインを買うメリットは、以下の通りです。
- 輝いているアンティークコインを買える
- 価格下落後なので、安く買える
デメリットを探そうと思っても、見つからないのでは…?という感じがします。
この記事冒頭の金貨に加えて、磨いてあるコインをいくつかご案内します。磨いていない場合に比べて輝きがあり、かつ安価です。
ポリッシュ(磨いてあるコイン)
イギリス ヴィクトリア女王 公式戴冠記念銀メダル
左は、ヘアーバンドをしているヴィクトリア女王、右は、女性3人から王冠を授かるヴィクトリアの様子です。
女性3人は、以下の通りです。
- ブリタニア:グレートブリテン島南部を擬人化した女性
- ヒルべニア:アイルランドを擬人化した女性
- スコティア:スコットランドを擬人化した女性
ドイツの5マルク銀貨
下は、ドイツ・ワイマール共和国の5マルク銀貨です。1925年発行ですから、アンティークコインとしては比較的新しい部類に入ります。
しかし、その割には価格が高めです。それは、希少性が高いからです。PL(プルールライク)ですから、プルーフの輝きを持った銀貨です。